前回の記事で、「再起動したら直るのはなぜか?」という話をしました。
パソコンの内部で滞っていたデータや動作の不具合を、
再起動によってリセットすることで解消できる、という内容でしたね。
では、そもそも“再起動しない状態”が長く続くとどうなるのか?
多くの人が知らず知らずのうちに、
その“再起動しない状態”を続けてしまっているんです。
そう──それが「スリープにしっぱなし」という使い方です。
こんなことはありませんか?
仕事を終えたあと、パソコンをスリープにして帰る。
次の日も電源ボタンを押すだけですぐに続きができる。
とても便利ですよね。
でも、「もう何週間もシャットダウンしていない」
「再起動したのがいつだったか思い出せない」
──そんな状態になっていませんか?
実はそれ、パソコンにとっては、ずっと仮眠だけで本当の睡眠を取れていないのと同じなんです。
スリープは“仮眠”に近い
スリープは、作業中の状態をそのままメモリに残し、画面やHDDを止めて電力を最小限に抑える機能です。
つまり、まだ脳(メモリ)は起きている状態。
だからこそ、復帰は一瞬ですが、メモリ上の情報は更新も整理もされないまま積み重なります。
これが長く続くと、
アプリやドライバーが内部的に不安定になり、
「動作が重い」「ネットに繋がらない」「USBが認識しない」
といった小さな不調が起こるのです。
休止状態は“しっかり眠る”イメージ
休止状態(ハイバネーション)は、
スリープとは違って、作業中の内容をストレージに保存してから電源を切ります。
電気は完全にゼロになり、バッテリーが切れても問題なし。
ただし再開時は、保存していたデータを読み戻すので少し時間がかかります。
たとえるなら、スリープが「昼寝」だとしたら、
休止状態は「夜のしっかりした睡眠」といったところです。
長期間使わないときや、ノートPCを持ち歩くときにはこちらが安全です。
シャットダウンは“完全な休息”…のはずが?
ところが、ここで注意点があります。
Windows 10以降では「高速スタートアップ」という機能が標準でオンになっており、
実は完全にシャットダウンしていないことがあります。
高速スタートアップは、起動を速くするために
システム情報の一部を休止状態のように保存しておく仕組みです。
つまり、“寝ているようで少し起きている”状態。
ですから、最近のWindowsでは「シャットダウン=完全休止」ではなくなっているのです。
だから「再起動」が効く
ここで再び登場するのが、前回の記事のテーマ。
再起動は、スリープや高速スタートアップとは違い、
すべてのプロセスとメモリをいったん止めて再構築する動作です。
再起動を行うと、
- メモリ上の一時データを完全に消去
- ドライバーやシステム設定を再読み込み
- 動作のズレをリセット
といった処理が行われ、パソコンが“リフレッシュ”されます。
つまり、「再起動したら直る」のは、
パソコンがようやく本当の意味で休めたから、というわけです。
では、どう使い分ければいい?
便利さを失わず、パソコンの調子を保つには、“眠らせ方”を状況に応じて変えるのがポイントです👇
| 状況 | おすすめの操作 | 理由 |
| 30分〜数時間の離席 | スリープ | すぐ復帰でき、消費電力も少ない |
| 半日〜数日使わない | 休止状態 | 電力ゼロでも安全に保存できる |
| 週1回程度 | 再起動 | システムを完全にリセットできる |
| 1か月に1回程度 | 完全シャットダウン(高速スタートアップ無効) | 内部を完全にクリーンに保つ |
このように、スリープを常用しながらも、定期的に「再起動」や「完全シャットダウン」を取り入れることで、トラブルを未然に防ぎ、パソコンの寿命を延ばせます。
パソコンも人間と同じ。「休ませ方」が大切
スリープは便利。
でも、それだけではパソコンも疲れてしまう。
人間だって、昼寝ばかりで夜にちゃんと眠らなければ、
だんだん集中力が落ちていきますよね。
パソコンも、再起動やシャットダウンという「深い眠り」が必要なんです。
パソコンを“正しく休ませる”習慣を持てば、
不調に悩まされる時間が減り、作業効率も上がります。
たまには再起動。
それが、あなたのPCを長持ちさせる一番シンプルなメンテナンス方法です。


